カルドシュ・パール著『合唱における純正なイントネーション』

「合唱における純正なイントネーション ~指導のためのアドバイス~」

待望の日本語版が出版!
純正なア・カペラの響きを追求する指揮者と合唱団必読の書
カルドシュ・パール著『合唱における純正なイントネーション』

●「合唱における純正なイントネーション ~指導のためのアドバイス~」
著者 カルドシュ・パール
訳者 伊藤直美
監修 松下耕
出版社 カワイ出版
価格 3,850円(税込)
装丁 B5判/160頁
ISBN 978-4-7609-5029-4

内容
推薦の言葉(セーニ・エルジェーベト)
カルドシュ先生の想い出(エトヴェシュ・ペーテル)
本文からの引用
本書について(用語と訳語に関して:伊藤直美)
I章 合唱団の構築
II章 純正なイントネーションの指導法
1.一般的な要因
2.音響面からの問題点
III章 音程
1.協和音程
2.2度と7度
3.2種類のD-R-M
4.例外
5.補足
IV章 合唱指導の実際
1.合唱指導のおける単旋律
2.コダーイ『純正に歌おう』
記号の説明
補遺
訳注(伊藤直美)
参考文献
略歴・著作
訳者あとがき

「合唱」には様々な魅力がありますが、純正なア・カペラの響きは、まさにその醍醐味の一つと言えるでしょう。

今回、出版された『合唱における純正なイントネーション』は、その純正な響きを作り出すための「理論」と「指導法」をまとめたものです。

著者のカルドシュ・パール(1927-1978)は、「純正な音高で歌う」ことを理論で裏付けし、体現したハンガリーの伝説的合唱指揮者・教育家です。

彼の代表的著作物である『合唱の育成・合唱の響き』(原題:『Kórusnevelés-kórushangzás』1969年初版)は以前日本でも出版されておりましたが、絶版となって久しい今日でもその復刊を望む声は後を絶ちません。
また2015年にパナムジカより出版された『一声部から始める合唱指導』(原題:Egyszólamúság az énekkari nevelésben』1968年初版)によってもカルドシュ・パールの名前をお聞きになられた方もいらっしゃることでしょう。

この『合唱における純正なイントネーション』(原題:『Intonálás』)の初版は、それら2冊よりも前の1965年にEMBより出版された『合唱指揮法』というシリーズの第3巻として書かれたもので、カルドシュの考えを最初にまとめた著作物です。
ハンガリーでは2017年にカルドシュ・パール基金によって復刊されており、日本語版の出版が待ち望まれておりました。日本語版は、前作『一声部から始める合唱指導』に続き、ハンガリー在住でハンガリー音楽教育研究者である伊藤直美氏が翻訳をし、イントネーションに造詣が深い作曲家の松下耕氏が、日本人がより理解しやすい表現となるよう監修を行っています。
入手ができなくなった『合唱の育成・合唱の響き』の代わりという以上に、著者カルドシュの難解な言い回しをより分かりやすい言葉で訳したものとして大きな期待を集めています。

原書のタイトル”Intonálás”は、”イントネーションをすること”という意味ですが、ここで言う「イントネーション」とは、私たちが一般的にイメージする「話し言葉の抑揚」ではなく、歌唱や楽器を演奏するときに「音高や音程を調整して正しい音を出す」ことを指します。ただしその「正しい音」とは絶対的なものではなく相対的なもので、「イントネーションする」とは、「音階」「和声」「テンポ」「リズム」など様々な要素が常に変化していく音楽の流れの中で、そこではどの音が”ふさわしいのか”を取捨選択しながら歌っていくことなのです。
「イントネーション」を身に付けることこそが、純正な響きの合唱を実現するための唯一の道である、というのがカルドシュ・パールの考えであり、本書でもそれが中核をなしています。

「第I章 合唱団の構築」では、音楽歴や能力が異なるメンバー(素材)を使って、全体的に均一であり、同時に差異性を持つ「よい合唱団」にどのように構築するかについて、各パートの人数の配分や配置についてまで科学的見地から詳細に述べられています。

「第II章 純正なイントネーションの指導法」では、ユニゾンで歌うことの必要性など、純正なイントネーションを身に付けるための指導法が譜例とともに示されています。

「第III章 音程」では、様々な音程における純正なイントネーションの取り方について、多くの譜例と数式を使って解説されています。

「第IV章 合唱指導の実際」では、単旋律を使ったイントネーションの練習方法と、コダーイの『純正に歌おう(原題:Énekeljünk tisztán)』について、その系統的で目的意識を持った使い方に多くのページを割いて綿密に紹介されています。『純正に歌おう』は、ぜひ本書と合わせてお求めいただき、純正なイントネーションを身に付けるための日々の練習にお使いいただくことをお勧めいたします。

原書は5つの章で構成されていましたが、第IV章があまりにも理論づくめであることからこの日本語版では省かれることになりました。ただその割愛された第IV章の中で重要と思われる箇所は第III章の最後と補遺に残されています。

全体を通して深遠な内容で、数字や計算式もたくさん登場するので拒否反応を起こされる方もいらっしゃるかもしれません。
最終的には、正しい音を計算できるようになることではなく、正しい音を感じることができる能力を養うことが重要なのですが、しかしこれらの理論が「イントネーション」を理解するために必要な知識であることも確かです。
純正な響きは一朝一夕に創り上げられるものではありませんが、この本の出版によって「イントネーション」の理解と実践に挑戦する方が増えれば、必ず道はそこに通じることでしょう。

《本文カルドシュ・パールの言葉より》
『検討した数字の比率を音楽上の質に変化させること、そしてそれらを通して音楽上の要求に変容されなければならない。そうでなければ、数字はどこへも導いてくれない。』

『すべてを計算することはできないし、また、する必要もない。音楽的聴覚に自由と提案する役目を供与し、イントネーションを感じながら歌うその流れの中に、不要な介入をしないこと。歌う際に選択された解決法は、聴覚を活発にして絶えず吟味すること。イントネーションがぐらついた時は、すぐにも感知し、直さねばならない。』

『どの音もその環境に応じて高かったり低かったりする。故に、よい聴覚と記憶力のみが正しい成果に導くのである。』