Wie liegt die Stadt so wust この街はなんと荒れ果てたことか(Rudolf Mauersberger 作曲)/ 混声合唱曲/同声合唱曲「歌よ飛び立て」(森山至貴 作曲)

世界の合唱作品紹介

海外で合唱指揮を学び活躍中の柳嶋耕太さん、谷郁さん、堅田優衣さん、市川恭道さん、山﨑志野さんの5人が数ある海外の合唱作品の中から、日本でまだあまり知られていない名曲を中心にご紹介していきます。
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Wie liegt die Stadt so wust(この街はなんと荒れ果てたことか)

● Wie liegt die Stadt so wust(この街はなんと荒れ果てたことか)
作曲:Rudolf Mauersberger (ルドルフ・マウアースベルガー)
出版社: Edition Merseburger
声部:SATB div.
伴奏:ア・カペラ
言語:ドイツ語

本日ご紹介するのはドイツ20世紀の作曲家Mauersberger/マウアースベルガー(1889-1971)、2度の世界大戦を跨ぐ激動の時代を生きた作曲家です。彼の特筆すべきキャリアとして、1930年から亡くなるまで40年の長きに渡り、ドイツ・ドレスデンの聖十字架教会の歴史ある少年合唱団 Dresdner Kreuzchor(ドレスデン聖十字架合唱団)のカントールを務めたことがあげられます。
ドレスデンは、1945年2月のドレスデン爆撃により街の大半が破壊され、聖十字架教会も破壊されると共に聖十字架合唱団の少年たちも命を落としました。戦後最初の晩課が焼け落ちた教会の跡地で行われたのは1945年8月のことで、その時に演奏されたモテットが、本日ご紹介する「Wie liegt die Stadt so wust(この街はなんと荒れ果てたことか)」です。

この作品は「エレミアの哀歌(旧約聖書)」のルターによるドイツ語訳からマウアースベルガー自身が選んで再構成した節がテキストとなっています。エレミアの哀歌の構成順にはあえて従わず、街が破壊し尽くされた事への悲しみ、疑問、怒り、神への嘆願といった強い感情が押し出された内容となっています。
楽譜は混声4部で書かれており、最大で7声までのdivisiがあります。曲の冒頭はppのユニゾンから始まり、空虚5度を用いた動きの少ないメロディーで荒廃した街の様子が描かれています。中間部はfで歌われる激しい感情と、pで歌われる悲しみの間を行ったり来たりしながら展開し、後半で4回繰り返される「Warum(なぜ)」、そして一番最後の「ach, Herr, siehe an meine Elend!(ああ主よ、私の苦しみをみてください!)」という言葉は高音のffで歌われ、マウアースベルガーとドレスデンの人々の引き裂かれるような叫びが聞こえてくるようです。

戦争を題材とした作品はその内容にまず感情を強く揺さぶられますが、なにより音楽として大変美しく、見事に構成された作品でもあります。こんな時代だからこそ、ぜひ多くの方に知っていただきたい1曲です。(谷郁)

録音:https://www.youtube.com/watch?v=hEUll8VoScg
楽譜:楽譜はパナムジカでお求めいただけます。

谷 郁 (たに かおる)

【筆者プロフィール】
谷 郁 (たに かおる)
国立音楽大学声楽科卒業及びグラーツ国立音楽大学大学院合唱指揮科修了。これまでに合唱指揮を花井哲郎、エルヴィン・オルトナー、ヨハネス・プリンツの各氏に師事。
Tokyo Cantatにおける第5回及び第6回若い指揮者のための合唱指揮コンクールいずれも第2位。国際合唱指揮コンクールTowards Polyphony(ポーランド)で高い評価を受け、NFM Choirにより客演指揮に招請された。
vocalconsort initium、Hugo Distler Vokalensemble、Tokyo Bay Youth Choir指揮者。他指導合唱団多数。

 

日本の合唱作品紹介

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同声合唱曲「歌よ飛び立て」
混声合唱曲「歌よ飛び立て」

●混声合唱曲/同声合唱曲「歌よ飛び立て」
作曲:森山至貴
作詩:みなづきみのり
出版社:パナムジカ出版
定価:660円 (税込)
声部:SATB/SMA
伴奏:ピアノ
判型:A4/12頁
ISBN:978-4-8660-4289-3/978-4-8660-4290-9

東京都合唱連盟は1986年に「シルバーコーラス交歓会」の名称でシニア世代を対象としたフェスティバルを両国公会堂にてスタートしました。第3回からは会場をサンパール荒川へと移し、第23回からは「シルバーコーラス・フェスティバル」に改称。その後、第25回からは浜離宮朝日ホールで開催され、現在に至ります。
今回ご紹介する「歌よ飛び立て」はその第40回記念を記念し、フェスティバルの講師に内定していた作曲家の森山至貴さんに委嘱し、フェスティバル参加者の合同演奏として初演されました。実行委員側からは、「ピアノ付きの混声四部」「シルバー世代が歌いやすい音域や旋律」「プログラムへ掲載したいので、有節歌曲形式で2見開き程度の長さ」といった条件を提示。森山さんからはテキストはどなたかに書き下ろしてもらいたいとの提案があり、みなづきみのりさんに依頼しました。
混声四部版と女声(同声)三部版(!)が納品され、混声版と女声版は同時演奏が可能とのこと。幅広く色々な合唱団で歌っていただけるように、と、森山さんからのありがたい配慮でした。

曲は全体の音域が概ねH-Dの10度の音域に収まるように書かれ、跳躍も極力抑えられておりシルバー世代にも歌いやすいように配慮がなされています。また、移調を自由に行ってよい旨が前書きに記されているので、それぞれの団の条件に合わせて歌いやすい音域に設定することも可能です。
混声・同声の両バージョンともdivisiがないため、少人数での演奏はもちろん、合わせての練習が限られるようなフェスティバルやジョイントコンサートでの合同演奏など、ごく様々な場面で歌っていただきたい作品となっています。
親しみやすく前向きなテキストもきっと幅広い世代に共感していただけることと思います。

混声版の初演は作曲者自身のピアノによって演奏されました。
YouTubeにアップしてありますので、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=z33XEjiZDL8

三好草平(みよし そうへい)

【筆者プロフィール】
三好草平(みよし そうへい)
1979年埼玉県生まれ。大学卒業に合わせ合唱団を立ち上げ指揮活動を開始。現在、東京・埼玉・富山で十数団体の指揮を務めている。
同世代の作曲家への委嘱や演奏会のプロデュース、ステージマネージャー、司会など合唱に関わる様々な活動を行っているほか、合唱アニメ「TARI TARI」(2012)、アニメ「ヴァチカン奇跡調査官」(2017)、アニメ映画「リズと青い鳥」(2018)、映画「コーヒーが冷めないうちに」(2018)、TVドラマ「トップナイフ」(2020)、TVドラマ「ドクターホワイト」(2022)、アニメ映画「アリスとテレスのまぼろし工場」など多数の作品の音楽制作に協力している。
東京都合唱連盟事務局長。日本合唱指揮者協会会員。アニソン合唱プロジェクト「ChoieL」監修。小さな夜の音楽会 主宰。