【学び舎 遊人シリーズ】
吉原真里オンラインセミナー
アジア人ですが、なにか?
~ クラシック音楽と人種・ジェンダー・文化資本の力学 (全3回)

クラシック音楽における人種、ジェンダー問題のリアルを聞く!

戦後の高度経済成長期に音楽鑑賞や楽器演奏がミドルクラスに広く普及した日本では、多くの人たちにとってクラシック音楽は文化のごく当たり前な一部となってきた。しかし、世界的な文脈で見ると、日本人を初めとするアジア人がクラシック音楽にこれほど傾倒し、国際的な舞台で活躍するようになったのは、特異な現象とも言える。アメリカ合衆国では、アジア人が人口全体で占める割合は5%程度であるが、ジュリアードやカーティスなどのトップレベルの音楽院の学生や、プロのオーケストラ団員の構成を見ると、特にピアノやヴァイオリンでは半分以上がアジア人であることが少なくない。権威ある音楽コンクールの出場者や入賞者の顔ぶれを見ても、アジア人の割合は常に高い。

クラシック音楽においてアジア人がここまでの成功を収めるようになったのには、どのような背景があったのか?「アジア人」であることと「クラシック音楽」を演奏したり作曲したりすることには、どのような関係があるのか?人種やジェンダー、社会階層といったカテゴリーは、音楽の実践においてどんな意味を持っているのか?「クラシック音楽」とは「西洋のもの」なのか?世界の変容とクラシック音楽界の流れはどのように連動しているのか、していないのか?

アメリカでのフィールドワークをもとにした研究Musicians from a Different Shore: Asians and Asian Americans in Classical Music (2007) 、日本語版『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?――人種・ジェンダー・文化資本』(2013)の著者が、本の刊行後のクラシック音楽界の流れも視野に入れて、アジア人とクラシック音楽の関係を語る。

《企画にあたって》

今もそうかもしれないが、かつて欧米を演奏旅行するクラシック音楽のアーティストたちが「あなたの国の音楽や文化について教えて」と言われ答えに窮したといった話を何度も聞いた。まぁ、だから気の毒にも「日本人アーティストにはアイデンティティがない」とか「根無し草だ」なんていうハナシになっていくわけだが、そのたびに「ことはそんなに単純じゃないんじゃない?」と思ったものだ。だから吉原真里さんが『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?』を出版された時はちょっと小躍りした。
ひとことで「アジア人」と括るのも難しいし、日本人もかつてのような勢いがあるわけでもない。状況も刻一刻と変化している。でも今こそ「アジアって何?」についておおいに議論すべき時であることは間違いないだろう。だから、ぜひ吉原さんの話を聞くことが私たちにとって必要となるわけだ。
もしかすると今はハッピーな状況でないかもしれない。でも、吉原さんの話を聞いているといつの間にか身体中にエネルギーが充溢してくるのがわかる。今回もそんなセミナーにしたい、そう思っている。(坂元勇仁)

講座概要

講座タイトル 吉原真里オンラインセミナー
アジア人ですが、なにか?
~ クラシック音楽と人種・ジェンダー・文化資本の力学(全3回)
講師 吉原真里(ハワイ大学アメリカ研究学部教授)
モデレーター 坂元勇仁(レコーディング・ディレクター)
日程・内容 第1回 8月22日(日)
「アジア人」クラシック音楽家とは
・クラシック音楽界における「アジア人」とは誰か
・アメリカの「アジア人」
・「アジア人」クラシック音楽家の人種経験と言説
第2回 8月29日(日)
アイデンティティとクラシック音楽
・社会階層と文化資本
・ジェンダーとセクシュアリティ
・クラシック音楽における「真正性(authenticity)」とは
第3回 9月5日(日)
「アジア人クラシック音楽家」の今と将来
・『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?』
 (2013)以後のクラシック音楽界
・#MeToo, BlackLivesMatter, コロナとクラシック音楽
・「クラシック音楽」は誰のものか
時間 各回とも10時~11時30分(90分)※受付開始30分前
受講料 3回通し5,000円(税込) ※各回ごとの受講設定はございません。
参考テキスト 吉原真里著
『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?
――人種・ジェンダー・文化資本』(アルテスパブリッシング) 2,750円(税込)
※テキストは必須ではありませんが、事前にお読みいただくとセミナーの理解度が増すでしょう。

申込方法

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「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?
人種・ジェンダー・文化資本

吉原真里 著
出版社 アルテスパブリッシング
ISBN 978-4-903951-70-6
判型・ページ数 A5判・上製 | 304頁
定価 2,750円(税込)
●内容
本書は2010年に『ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール』(弊社刊)でアメリカの一地方都市の市民ボランティアが育む音楽コンクールの実態を活写したアメリカ文化研究者、吉原真里さんによる新著。2008年にテンプル大学出版局から刊行されたMusicians from a Different Shore: Asians and Asian Americans in Classical Musicを、著者自身が翻訳したものです。
現在の西洋クラシック音楽界(とくにアメリカの)におけるアジア人およびアジア系の音楽家の躍進は目覚ましいものがあります。西洋の教養文化の最たるものとされているクラシック音楽の世界で、アジア人がここまで活躍するようになったのはなぜか──。70人におよぶアジア系音楽家の証言をもとに、歴史・文化・民族誌の見地から、クラシック音楽ひいては芸術の本質にせまります!
●目次
はじめに

1 「アジア人」とクラシック音楽
 太平洋を越える西洋音楽
 西洋音楽、東アジアに到来
 蝶々夫人・日本版
 中産階級のためのクラシック音楽、そしてアジアから西洋への「逆輸出」
 スズキ・メソードのグローバリゼーション
 結び
◆音楽家たちの声
1 デイヴィッド・キム
2 リフェン・アンソニー
3 高橋利夫
4 竹澤恭子
2 「アジア人音楽家」という「人種」
 アメリカのアジア人音楽家たちの「ルーツ」と「ルート」
 留学生
 「音楽移民」
 「移住するプロ音楽家」
 「越境子女」
 「混合」アジア人
 音楽と「差異」
 音楽と民族/国家アイデンティティ
 結び
3 クラシック音楽における性力学
 ジェンダー規範の逸脱──男性音楽家たち
 音楽界の性力学との葛藤──女性音楽家たち
 アジア人音楽家のビジュアル・マーケティング
 音楽とセクシュアリティ──ゲイの音楽家たち
 結び
4 階層としての音楽家、文化資本としてのクラシック音楽
 階層理論と職業としての音楽
 音楽家の出身階層 
 クラシックのコスト
 クラシック音楽家の経済生活
 文化的生産「フィールド」と階層
 結び
◆音楽家たちの声
5 マーガレット・レン・タン
6 チョーリャン・リン
7 名倉誠人
8 ケンジ・バンチ
5 自分たちの声を求めて
 クラシック音楽の「インサイダー」と「アウトサイダー」
 自分自身の声 その一──器楽家の場合
 自分自身の声 その二──オペラ歌手の場合
 自分自身の声 その三──作曲家の場合
 結び
おわりに──クラシック音楽という「経験」
あとがき
参考文献
索引

※全国の書店・楽器店・CDショップ・オンライン書店でお求めいただけます。

【アルテスパブリッシング公式サイト】

「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?

講師プロフィール

吉原 真里(よしはら・まり)

ハワイ大学アメリカ研究学部教授。東京大学教養学部卒、ブラウン大学アメリカ研究学部博士号取得。1997年よりハワイ大学勤務。専門はアメリカ文化史、アメリカ=アジア関係史、ジェンダー研究、アメリカ文学、カルチュラル・スタディーズなど。英語・日本語の両方で幅広く執筆活動を行う。日本語の著書は『ドット・コム・ラヴァーズ ――ネットで出会うアメリカの女と男』(中公新書)『性愛英語の基礎知識』(新潮新書)『ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール ――市民が育む芸術イヴェント』(アルテスパブリッシング)『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか? ――人種・ジェンダー・文化資本』(アルテスパブリッシング)など。水村美苗『日本語が亡びるとき』を英語に共訳。最新の著作は『Dearest Lenny: Letters from Japan and the Making of the World Mestro』(Oxford University Press)。

坂元 勇仁(さかもと・ゆうじ)

レコーディング・ディレクター。コーラス・カンパニーにおいて「学び舎 遊人」プロジェクトを立ち上げ、「コロナ禍における合唱活動を考える」シリーズほか多数のオンラインセミナーを企画・実施、モデレーターを務める。現在、大阪芸術大学客員教授、東京音楽大学特任講師、道の駅日光 公共施設 プランニング・プロデューサー。


「学び舎 遊人」シリーズについて

「学び舎 遊人」はレコーディング・ディレクターである僕、坂元勇仁が東京・神保町で開いていたリアルなイベントスペースでした。そこでは数々のイベントを通して多くの人たちが出会い、熱い議論が繰り広げられてきました。スペースは建物の建て替えという事情で2020年4月にクローズとなりましたが、そこで育んだ「理念」を継続するために創設されたのがコーラス・カンパニーの学び舎 遊人プロジェクトです。語り合いたい人、どうしてもその人の想いを伝えたい人、みんなでその英知を共有したい人、そんな人たちとの「語りの場」をリアルな場以上に熱く作り続けていきたいと願っています。どうぞご支援をお願い致します。(坂元勇仁)

※このオンラインセミナーは、Zoomの「ウェビナー」システムを利用して行います。受講者は音声、ビデオともオフの状態での参加となります。

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