音楽史家 大崎滋生『ベートーヴェン像 再構築』を熱く語る
鼎談 大崎滋生×安田寛×坂元勇仁
第1シリーズ(全5回)

ベートーヴェン研究の最前線を体験できる稀な鼎談!

耳が聞こえないという作曲家として致命的なハンディーを負ったベートーヴェンが、それにめげずに第九を書いたのはなんて素晴らしいなどなど、ベートーヴェンほど間違った逸話に塗り込められた作曲家はいない。間違ったまま無責任に流布しているこれらの逸話を剥ぎ取って真のベートーヴェン像を描き出すことが研究者の責任だと、その使命を強く意識する大崎滋生が語る実に新鮮なベートーヴェン。私たちはベートーヴェンの一体何を知っていたのか。

ベートーヴェン研究の三種の神器とも言うべき「書簡交換全集」「会話帳全集」「新作品カタログ」が出そろった今、これまでのベートーヴェン像は書き換えられようとしている。その先頭を切って2018年6月に出版された大崎滋生の『ベートーヴェン像 再構築』(春秋社・全三巻・本文1306ページ)は不思議な沈黙を持って迎えられた。黙殺されたのではないかとさえ思えるほどだ。理由は色々と考えられるが根本的なものは、これまでの作品中心主義で楽譜を分析するだけでは出てこない新説が随所にちりばめられて、従来のベートーヴェン研究者、あるいは音楽史研究者でさえも戸惑わせているのではないか。あるいは逸話の流布に加担していた咎意識があるのであろうか。

しかし虚心坦懐に読めばこれほどスリリングな著作は無い。例えばあの有名な逸話、ベートーヴェンは本当に皇帝ナポレオンに激怒したのであろうかについて述べた章などは、通俗的な推理小説やサスペンス小説よりもはるかに面白い。これを読んだ後では、初めてエロイカシンフォニーを聴いたときのあのみずみずしい感動が蘇ってくる。

音楽探偵安田寛とレコーディング・ディレクター坂元勇仁が、恐れ多くも研究の巨人本人を目の前にして、ベートーヴェンの新たな感動を求めて、前半五回、後半五回という贅沢な十回シリーズで、遠慮なくズバズバと切り込んでいく。

目指すところはベートーヴェン像に塗りたくられた19世紀のロマン主義美学とドイツナショナリズムを削り取って、その下に現れる本来のベートーヴェン像を取り戻すことである。

ベートーヴェン研究の最前線を体験できる稀な鼎談となるに違いない。


セミナーに先立って行われた最終打合せの模様を編集したプロモーションビデオです。「何だかむずかしそう、、、」と思っていらっしゃった方はこちらをご覧いただけばこのセミナーの面白さや大崎先生のお人柄をお分かりいただけるかと思います。

講座概要

講座タイトル 音楽史家 大崎滋生『ベートーヴェン像 再構築』を熱く語る
鼎談 大崎滋生×安田寛×坂元勇仁
第1シリーズ(全5回)
パネリスト 大崎滋生 (音楽社会史家)
安田寛(音楽探偵)
坂元勇仁(レコーディング・ディレクター)
日程・内容 2021年
第1回 5月22日(土)

音楽史はどのように存在しているのか
第2回 6月5日(土)
大作曲家インペリアリズム(中心主義)とパンのための仕事
第3回 6月19日(土)
ベートーヴェンは本当に皇帝ボナパルトに激怒したのか
第4回 7月3日(土)
フルート・ホルン問題
第5回 7月17日(土)
ベートーヴェンはなぜ一つしかオペラを書かなかったのか
時間 各回とも14時~15時30分(90分)※受付開始30分前
受講料 5回通し 8,000円(税込) 各回 1,800円(税込)

申込方法

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講師プロフィール

大崎滋生(おおさき・しげみ)

音楽社会史家[西欧音楽史]
研究者としての出発点はその当時、音楽史学の中心的課題であった資料研究で、難易度の最も高いヨーゼフ・ハイドンを研究テーマに選び、冷戦下の東西ヨーロッパ13ヵ国で図書館・修道院等でハイドンの原典資料の伝承についてフィールドワーク。1982年にヴィーンで開催されたヨーゼフ・ハイドン生誕250年記念国際会議に参加。その後、音楽社会史研究のメッカ、ドイツのマインツ・グーテンベルク大学音楽学研究所にゲスト教授として招かれ、過去の音楽社会全体の研究に従事。所長マーリンク博士(後に国際音楽学会会長)との共同研究の成果として、共著『オーケストラの社会史』(1990年)を著すとともに、単独で『楽譜の文化史』(1993年)、および『音楽演奏の社会史--よみがえる過去の音楽』(1993年)を執筆。音楽史の成り立ち(史学史)を『音楽史の形成とメディア』(2002年)に、CD時代の到来に即応して約3000曲のシンフォニーを『文化としてのシンフォニー』全3巻(2005-2013)にまとめる。近著としては『ベートーヴェン像 再構築』全3巻(2018年)、『ベートーヴェン 完全詳細年譜』(2019年)がある。

安田寛(やすだ・ひろし)

音楽探偵
1948年、山口県生まれ。1974年国立音楽大学大学院修士課程終了。2001年奈良教育大学教授。2013年定年退職し現在奈良教育大学名誉教授。2001年放送文化基金賞番組部門個別分野「音響効果賞」、2005年社団法人日本童謡協会日本童謡賞・特別賞。主な著書に、『唱歌と十字架 明治音楽事始め』(音楽之友社、1993年)、『日韓唱歌の源流 すると彼らは新しい歌をうたった』(音楽之友社、1999年)、『唱歌という奇跡 十二の物語』(文春新書、2003年)、『バイエルの謎 日本文化になったピアノ教則本』(音楽之友社、2012年、新潮文庫、2016年)、共著に『仰げば尊し―幻の原曲発見と「小学唱歌集」全軌跡』(東京堂出版、2015年)、『バイエルの刊行台帳』(音楽之友社、2021年)などがある。

坂元勇仁(さかもと・ゆうじ)

レコーディング・ディレクター
コーラス・カンパニーにおいて「学び舎 遊人」プロジェクトを立ち上げ、「コロナ禍における合唱活動を考える」シリーズほか多数のオンラインセミナーを企画・実施、モデレーターを務める。現在、大阪芸術大学客員教授、東京音楽大学特任講師、道の駅日光 公共施設 プランニング・プロデューサー。

大崎滋生先生著作物のご案内 ※お持ちになると講座の理解が深まるでしょう。

ベートーヴェン像 再構築
大崎 滋生 著
出版社 春秋社
ISBN 9784393932117
判型・ページ数 A5・1360ページ
定価 19,800円(本体18,000円+税)
作曲家の創造と社会。21世紀にベートーヴェンはどう読み解かれるべきか。
セイヤー伝記を大きく塗り替える試み。

最新の基礎研究――書簡交換全集・会話帖全集・楽譜新全集校訂報告の全的把握と新作品目録によって可能となった全く新しいベートーヴェン像の地平。2020年(生誕250年)に先駆けてベートーヴェン新時代の到来を告げる労作。見逃されてきた楽譜出版の実態解明と作品の成立・受容の様相を根本から見直す精緻かつダイナミックなアプローチ。
■"ベートーヴェン像再構築"のためのキーワードから(ごく一部)
発表から百余年、セイヤー(=ダイタース=リーマン)の研究を徹底検証!
・新カタログがあぶり出す国外での精力的な出版活動とその意味
・作品番号と作曲時期の「ずれ」はこうして起こった
・Op.番号には17もの番号空白があった
・出版をめぐる交渉・駆け引き、戦時下の経済低迷に晒される
・さまざまな献呈のありかた:献呈行為に託されたメッセージ
フランス革命戦争~ナポレオン戦争(1792-1815)に翻弄され続けた青年~壮年期
・2週間とされた第1回ヴィーン旅行の謎:5ヶ月近いヴィーン・バイエルン武者修行だった
・「モーツァルトの精神をハイドンの手から」再考
・結果としてのヴィーン定住:ボン宮廷の消滅が退路を断った
・「ハイリゲンシュタットの遺書」と見過ごされてきた作品群(ピアノ変奏曲Op.3435とオラトリオ《オリーブ山のキリスト》):“傑作の森”のミッシング・リンク
・パリ進出計画(《エロイカ》、《ヴァルトシュタイン》《クロイツェル》)が実現しなかったわけ
・「大作」作曲時の経済的困難、"ベートーヴェン・オフィス"の功罪
・《運命》と《田園》、同じ二人の貴族への共同献呈は何を意味していたのか
・《ヴェスタの火》放棄にはじまる《フィデリオ》完成までの長い道程を当時のオペラ上演の全貌に位置づける
・三貴族による生涯年金の支給実態、通貨下落の直撃、そして裁判闘争
・ヴィーン離脱表明から年金支給開始に急展開の動きを追う
・著作権を自ら守る闘争、国際的時間差多発出版という戦略:《皇帝》の最初の出版はロンドンだった
中期から後期へ
・生涯全開期はなぜ“沈黙の時代”と呼ばれたか
・次弟カール一家への援助と借金、末弟ヨハン像の見直し、そして甥カールとの関係:家族として、秘書として…
・シンドラーの会話帳破棄・改竄の真相:後世の誤った像の元凶を糾す
・後期のピアノ作品はすべて「パンのため」!? 《ミサ・ソレムニス》と《第9》"
※3分冊合本(①384頁 ②488頁 ③488頁)

ベートーヴェン 完全詳細年譜
大崎 滋生 著
出版社 春秋社
ISBN 9784393932155
判型・ページ数  A5・632ページ
定価 8,800円(本体8,000円+税)

最新の基礎研究――書簡交換全集・会話帖全集・楽譜新全集校訂報告の全的把握と新作品目録によって可能となった全く新しいベートーヴェン像の地平。2020年(生誕250年)に先駆けてベートーヴェン新時代の到来を告げる労作大崎滋生著『ベートーヴェン像再構築』の、もう一つの偉大な成果。21世紀にベートーヴェンはどう読み解かれるべきか。その基本資料となるべき大作曲家の創造と社会を克明に年譜化。
付録:ベートーヴェンの「"音楽による戯れ"・カノン作品」

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